

緩和ケア病棟
「お茶碗を左手で持てるようになりたい」
80代・女性
入院までの経緯・患者さんの背景
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60代後半で肺腺がんを発症し、部分切除。リンパ節転移、頸骨・骨盤の骨転移もあり化学療法を行う。
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秋田の病院で加療していたが、緩和方針となり、娘がいる盛岡へ転院。当院にて外来フォローしていた。
内服で疼痛コントロールしていたが、ご自宅では対応困難となり、入院となる。
リハビリ前(入院時)の患者さんの状況
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背部痛。左上肢~手が動かない。左上肢~手のしびれ。
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車いす中心の生活。移乗は筋力低下からふらつきがあり、見守りが必要。
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日常生活動作は両手を使用するものは一部介助が必要。片手のみで可能な動作はご自身で可能だが、時間がかかってしまう状態。
リハビリテーション記録
リハビリ期間:約2月
開始~約1ヵ月
【リハビリの内容・目的】
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筋力・体力向上のため、離床しハンドエルゴを足で駆動。
重錘などを使用した上肢筋力訓練。 -
手の筋力向上のため、セラプラスト(粘土)を使用した課題。(握る、つまむ など)
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巧緻性向上のため、左手での物品操作課題(大きめの対象物)
患者さんの変化・回復
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ご自身で左手を活用されるよう心がけるようになった。自主訓練も開始。
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トイレでの下衣操作がスムーズに行えるようになった。
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左手で食器の把持、ボタンを留めるなど、重さのある物の把持や指の力を使う巧緻動作は困難。

約1ヵ月~2ヵ月
【リハビリの内容・目的】
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第1期間と同じ内容の筋力トレーニングを継続。負荷量(重さや粘土の硬さなど)をUP。
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巧緻性課題はより小さな物品を使用。
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手の力の入れ方や、左右の手の使用の仕方を比較・分析し、左手での動作に取り入れる。
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リハ以外の時間も離床し、楽しめるよう「塗り絵」の提案・提供を行ったところ、ご本人も楽しんで取り組まれていた。
患者さんの変化・回復
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左手での食器把持が可能となった。
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ボタン留めも可能となり、以前より時間がかからずにできるようになった。
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左肩~手にかけての痺れは残存している。

リハビリ後、患者さん・ご家族が喜んでいたこと
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左手が使えるようになって嬉しい。
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完成した作品(塗り絵)を家族にほめてもらえたと喜ぶ姿が見れた。

スタッフコメント
ご紹介した方の場合は、左手が使えるようになったことで、着替えや食事の際に自分で出来ることが増えたと実感されていました。また、余暇時間に始めた塗り絵がご家族に褒められたり、同室の方とのコミュニケーションにつながったりしたことも、その人らしい時間を過ごす一助になれたのかなと感じています。
緩和ケア病棟へ入院する方やご家族は、さまざまな思いを抱えていらっしゃると思います。常に「その人らしさ」を考え、少しでも不安やつらさを和らげ、達成感や満足感を感じていただけるような関わり方を目指しています。
作業療法士 Sさん
※症例は2019年3月時点のものです。
※掲載している写真はイメージです。