

脳梗塞
「正座ができるようになって、お茶を点てたい。」
80代・女性
入院までの経緯・患者さんの背景
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脳梗塞を発症し、急性期病院に20日間入院・治療を行う。
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右片麻痺・失語症が残存したため、リハビリテーション継続目的で当院へ転院。
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60年近くお茶の先生をされていた方で、退院後にもお茶をつづけたいと希望。
リハビリ前(入院時)の患者さんの状況
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ベッドからの起き上がりが困難。
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車いすへの乗り降り、トイレ、着替え、整容動作などほぼ全ての日常生活動作に介助が必要な状態。
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コミュニケーションにおいても声量の低下や言葉の理解・表出が困難となる失語症を認め、誘導や推測が必要。
リハビリテーション記録
リハビリ期間:約3ヵ月
開始~約2週間
【リハビリの内容・目的】
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長下肢装具・短下肢装具を使用した歩行訓練。
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筋力トレーニングマシンを使用した筋力訓練によって、非麻痺側、体幹の筋力を強化。
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エルゴメーターを使用した有酸素トレーニングを実施し、血管の治療、運動耐容能の改善を目指す。
患者さんの変化・回復
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装具を付けて、500m程の歩行が可能になる。(介助1名)
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歩行による脳への血流増加によって、言葉も出やすくなってきた。日常会話は問題なく話せるようになった。

約2週~2ヵ月
【リハビリの内容・目的】
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麻痺側上下肢の運動強化:残存している麻痺側の運動機能を最大限に向上させるため。
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スクワット・荷重動作訓練:荷重場面での安定した筋力の発揮、および全身のバランス能力の改善のため。
患者さんの変化・回復
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歩行時は装具を付けない状態でも歩行可能となる。(介助1名)
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日中の病棟内の移動は4点杖を使用して可能となる。
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正座ができるようになった。

約2ヵ月~3ヵ月(現在)
【リハビリの内容・目的】
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BWSTTとウォークエイドを併用した歩行訓練を実施。
*BWSTT(体重免可トレッドミルトレーニング)
身体を吊ることで足にかかる負担を減らし、歩き方を整えていったり、長距離歩行する練習を行う。
*ウォークエイド
すねの部分にある足首を上げる筋力を電気で刺激することで、つま先が上がりやすくなり、踵から着くように歩く感覚を取り戻す。

患者さんの変化・回復
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歩行の安定性が向上
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歩行パフォーマンス(歩き方、距離など)が向上

リハビリ後、患者さん・ご家族が喜んでいたこと
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日中は4点杖で歩き、夜は車いすを使ってトイレに行けるようになった。
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できないと思っていた正座ができた。茶道に必要な動きの確認ができるようになって嬉しかった。

スタッフコメント
長いリハビリ期間の中で大事なことは、回復したい・よくなりたいという気持ちを強くもって継続することだと思います。そのために日々の目標やできたこと、次の課題を意識的に患者さんと共有し、退院までの道筋を明確にすることを心掛けました。
全く歩くことができない状態からここまで回復しているので、とてもリハビリを頑張られたと思います。もう少しリハビリは続きますので、一緒に頑張りましょうね!もっと元気になられたら、ぜひ、お茶会に呼んでくださいね。
理学療法士 Eさん
※症例は2019年3月時点のものです。
※掲載している写真はイメージです。