脳幹梗塞・嚥下障害など
「大好きなラーメンが食べたい」
70代・男性
入院までの経緯・患者さんの背景
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血圧上昇にてかかりつけ医を受診。橋梗塞と診断され、当院へ入院。
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入院中に嚥下障害が増悪。橋梗塞再発・誤嚥性肺炎発症。
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元々、パーキンソン病を患っていた。
リハビリ前(入院時)の患者さんの状況
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パーキンソン病の影響ですくみ足歩行(杖歩行)。めまいの訴えあり。
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軽度嚥下障害・構音障害あり。
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橋梗塞再発・誤嚥性肺炎発症により、酸素投与、呼吸状態悪化。
リハビリテーション記録
リハビリ期間:約4.5ヵ月
開始~約2週間
【リハビリの内容・目的】
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嚥下内視鏡検査(VE検査)、嚥下造影検査(VF検査)を実施。
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嚥下関連筋の筋力トレーニング
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訓練用ゼリーでの直接的嚥下訓練(左向き嚥下)
患者さんの変化・回復
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肺炎が改善されてきて、呼吸状態が安定した。
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ゼリーはむせないが、食べ進めると咽頭残留音増加。
約2週~4週目
【リハビリの内容・目的】
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2回目:嚥下内視鏡検査(VE検査)実施
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経鼻経管と併用してゼリー粥+訓練食を昼食のみ開始。(左向き嚥下+1口量調整)
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嚥下関連筋の筋力トレーニングを継続。
患者さんの変化・回復
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食べ進めても咽頭残留音がしなくなった。
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代償手段(左向き嚥下)の獲得は不十分。(声かけが必要)
約4週~8週目
【リハビリの内容・目的】
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3回目:嚥下内視鏡検査(VE検査)実施
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全粥・トロミ刻み食(1日3食へ)。経管栄養中止。
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嚥下関連筋の筋力トレーニングを継続。
患者さんの変化・回復
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食事内容の把握ができる形態になり、食事が楽しみになった。
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代償手段(左向き嚥下)を獲得。
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食事以外のADLもUP(入浴の自立など)
約8週~12週目
【リハビリの内容・目的】
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4回目:嚥下内視鏡検査(VE検査)実施
2回目:嚥下造影検査(VF検査)実施 -
米飯・熟煮食へレベルUP
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嚥下関連筋の筋力トレーニングを継続。
患者さんの変化・回復
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代償手段(左向き嚥下)が不要になる。
約12週~退院
【リハビリの内容・目的】
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食形態調整:めん類OK(スープは飲まないように)
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水分のトロミ付けは継続。
患者さんの変化・回復
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ラーメンが食べれた。(スープは飲まない)
リハビリ後、患者さん・ご家族が喜んでいたこと
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好物だったラーメンが食べれて嬉しかった。
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入院中に誕生日を迎え、ケーキでお祝いができたこと。
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食事ができるようになったことで、自宅での生活ができるようになった。
スタッフコメント
耳鼻咽喉科医と協力して定期的にVE検査を実施することで、訓練方法と食形態を検討していきました。患者さんの「食べたい」という気持ちを大切にしながら、実際の嚥下能力とのバランスをよく考え、食形態を選定するようにしています。
こちらの患者さんの場合、身体に麻痺などはなく歩行もできていたので、ご自宅での生活を考えた時に「食事」が課題として挙がりました。誤嚥防止のために、水分のトリミ付けはお願いしていますが、それ以外は一般的な食事ができるまで回復しました。これからも好物のラーメンやご家族との食事を楽しんでいただきたいと思います。
言語聴覚士 Hさん
※症例は2019年3月時点のものです。
※掲載している写真はイメージです。